つるありインゲンの栽培において、摘心は本当に必要なのでしょうか。つるが伸び放題になって管理に困ったり、思ったように収穫量が伸びなかったりすると、不安になります。実は、適切な栽培期間中に行う摘心作業が、長い収穫時期を確保し、たくさんの実りを得るための鍵を握っています。
この記事では、つるありインゲンの栽培で失敗や後悔をしないために、摘心の基本的な考え方から具体的な方法、さらには収穫量を最大化するための管理のコツまで、分かりやすく解説します。
- つるありインゲンに適した栽培環境と準備
- 収穫量を増やすための摘心の具体的なタイミングと方法
- 株の勢いを維持し、長く収穫するための管理術
- サヤが硬くなる前に収穫する最適なタイミング
つるありインゲン栽培における摘心の基本

このセクションでは、つるありインゲンを元気に育て、たくさんの収穫を得るための基礎知識を解説します。栽培を始める最適な時期から、種まき、そしてつるを支える支柱の立て方まで、一つひとつのステップを丁寧に見ていきましょう。
- つるありインゲンの栽培時期と環境
- 最適な種まき時期はいつ?
- インゲン豆は発芽に水につけるべきか
- 種まき方法と適切な株間
- 収量を増やすための支柱の立て方
つるありインゲンの栽培時期と環境
つるありインゲンを元気に育てるためには、その生育に適した時期と環境を整えることが最初のステップです。インゲンは温暖な気候を好むため、栽培時期を見極めることが成功の鍵となります。
一般的に、栽培のスタートは春まきと夏まき(秋どり)の年2回が可能です。生育適温が15~25℃なので、この温度を保てる時期に栽培を合わせます。一方で、霜には非常に弱いため、遅霜の心配がなくなった頃に種まきを始めるのが基本です。また、土壌の酸度も生育に影響を与えます。弱酸性から中性(pH6.0~6.5)の土壌を好むため、植え付けの2週間ほど前には苦土石灰などをまいて土壌のpH調整をしておきましょう。
連作障害を起こしやすいマメ科植物なので、過去2~3年マメ科の植物を栽培していない場所を選ぶことも大切なポイントです。日当たりと風通しが良く、水はけの良い場所を選んで、美味しいインゲンを育てましょう。
項目 | 最適な条件 | 備考 |
栽培時期 | 春まき(4月下旬~5月)、夏まき(7月~8月中旬) | 寒冷地や温暖地で時期は多少前後します |
生育適温 | 15~25℃ | 25℃以上の高温では花が落ちやすくなります |
収穫時期 | 春まき(6月~7月)、夏まき(9月~11月) | 種まきから約60~70日で収穫が始まります |
土壌pH | 6.0~6.5(弱酸性~中性) | 酸性土壌では生育が悪くなります |
日照条件 | 日なた | 日当たりと風通しの良い場所を好みます |
連作 | 避ける | 最低2~3年はマメ科を栽培していない場所を選びます |
最適な種まき時期はいつ?

つるありインゲンの種まきに最適な時期は、主に春と夏の2回あります。どの時期にまくかによって、栽培管理のポイントや収穫のタイミングが異なるため、計画的に進めることが大切です。
春まき栽培
春まきは、4月下旬から5月下旬にかけてが適期です。この時期に種をまくと、梅雨を経て夏(6月下旬から7月上旬)に収穫の最盛期を迎えます。気温が十分に上がり、遅霜の心配がなくなったことを確認してから種まきを始めるのが安全です。早まきしすぎると、低温で発芽しなかったり、生育が遅れたりする原因になるため注意しましょう。
夏まき栽培(秋どり)
夏まきは、7月から8月中旬頃に行います。この時期に種をまくと、厳しい真夏の暑さを越え、気候が穏やかになる秋(9月下旬から11月頃)に収穫できます。つるありインゲンは比較的暑さに強いですが、それでも25℃を超える高温が続くと花の付きが悪くなることがあります。そのため、真夏の収穫を避ける夏まきは、安定した収穫を目指す上で合理的な選択肢と言えます。
どちらの時期に栽培する場合でも、発芽適温である23~25℃を目安に、お住まいの地域の気候に合わせて種まきの日を決めると良いでしょう。

インゲン豆は発芽に水につけるべきか
インゲン豆の種まき前に、種を水につけるべきか迷う方がいるかもしれません。
まず、種を水につける一番の目的は、発芽を促進することです。種皮が硬いマメ科の種子は、一晩ほど水に浸しておくことで水分を吸収し、発芽が揃いやすくなる効果が期待できます。特に、土が乾燥している場合や、少しでも早く芽を出させたい場合には有効な手段と考えられます。
最近ではメーカーさんの努力もあって発芽率が向上しているため、水につけなくても普通に発芽します。
種まき方法と適切な株間
つるありインゲンの種まきは、畑やプランターに直接まく「直まき」が一般的です。鳥に種を食べられることがあるため、発芽するまでは不織布をかけて保護すると安心です。
種まきの深さと数
種をまく際は、深さ2~3cm程度の穴を掘り、1ヶ所に3~4粒の種をまきます。このとき、種同士が重ならないように少し間隔をあけてまくのがポイントです。インゲンの種は「へそ」と呼ばれる部分を下にしてまくと、根がスムーズに伸びやすいと言われています。まき終えたら、2cmほどの厚さに土をかぶせ、軽く手で押さえて土と種を密着させます。種まき後の水やりは、土が湿りすぎると種が腐る原因になるため、土が乾いている場合のみ、あっさりと与える程度に留めましょう。
適切な株間
つるありインゲンはつるが旺盛に伸び、葉も大きく茂るため、適切な株間を確保することが重要です。株間が狭すぎると、風通しが悪くなって病害虫が発生しやすくなったり、葉が密集して日光が当たらず生育が悪くなったりします。畑で栽培する場合、畝(うね)幅を100~120cmとり、株間は30~40cm程度あけるのが一般的です。
プランターで栽培する場合は、深さが30cm以上ある大型のものを選び、65cm幅のプランターであれば2株が目安です。本葉が2枚程度に育ったタイミングで、生育の良いものを1~2本残して間引きを行います。
収量を増やすための支柱の立て方

つるありインゲンは、その名の通りつるを2m以上に伸ばして成長するため、支柱を立ててつるを誘引するスペースを確保することが不可欠です。適切な支柱立ては、株の健康を保ち、結果として収穫量を増やすことに直結します。
支柱を立てるタイミングは、本葉が4~5枚になり、つるが伸び始める前です。つるが伸び始めてから慌てて支柱を立てると、根を傷つけてしまう可能性があるため、早めに準備しましょう。
一般的な支柱の立て方(合掌式)
畑で複数の株を育てる場合、「合掌式」と呼ばれる立て方が一般的で、風に強く安定感があります。
- 長さ2m以上の支柱を用意します。
- 株の両側に、畝に沿って支柱を30~40cm間隔で、斜めに交差するように土に差し込んでいきます。
- 交差した部分を横方向に渡した長い支柱(水平支柱)に固定し、全体の強度を高めます。
- この骨組みに、きゅうりネットなどのつるもの用ネット(10cm角程度の網目)を張ります。
つるは自然にネットに絡みついていきますが、最初は手で軽く誘引してあげるとスムーズです。しっかりと安定した支柱を立てることで、葉やサヤにまんべんなく日光が当たり、風通しも良くなるため、病気の予防と収穫量アップの両方につながります。
つるありインゲン栽培の摘心と収穫のコツ

栽培の基礎が整ったら、次はいよいよ収穫量を大きく左右する「摘心」と、その後の管理作業です。なぜ摘心が必要なのか、どのタイミングで、どのように行えば良いのかを詳しく解説します。また、追肥や摘葉といった少しの工夫で、収穫期間を長くする方法も紹介します。
- つるありインゲンになぜ摘心が必要か
- 親づるを摘心するタイミングと方法
- 収穫期間を長くするための追肥と摘葉
- つるありインゲンの収穫の目安
つるありインゲンになぜ摘心が必要か
つるありインゲンの栽培において、「摘心(てきしん)」は必ず行わなければならない作業ではありません。しかし、摘心を行うことで、収穫量を増やしたり、管理をしやすくしたりと、多くのメリットが期待できます。
摘心とは、茎の先端(親づる)の芽を摘み取る作業のことで、頂点の成長を止める目的があります。なぜなら、頂点の成長を止めることで、株のエネルギーが脇から出る新しい芽(子づるや孫づる)の成長に回り、結果として株全体が横に広がり、花やサヤが付く箇所が増えるからです。
特に、以下のような場合には摘心が有効です。
- 収穫量を増やしたい場合: インゲンの品種によっては、元々子づるの発生が少ないものがあります。このような品種では、早めに親づるを摘心することで子づるの発生が促され、収穫量を増やす効果が期待できます。
- 草丈を管理したい場合: つるありインゲンは放っておくと、支柱の高さをはるかに超えて2m以上に伸びることがあります。支柱の高さを超えてしまうと、誘引や収穫といった管理作業が非常にやりにくくなります。支柱の高さで摘心を行うことで、草丈をコントロールし、手の届く範囲で効率的に作業ができるようになります。
このように、摘心は株の成長をコントロールし、より多くの収穫を得るための積極的な栽培技術と言えます。
親づるを摘心するタイミングと方法
摘心は、目的によって適切なタイミングが異なります。間違ったタイミングで行うと逆効果になることもあるため、株の状態をよく観察して行いましょう。
収量アップが目的の場合
子づるの発生を促して収穫量を増やすことが目的の場合、比較的早い段階で摘心します。
- タイミング: 本葉が5~6枚に増え、親づるが100cm~150cm程度に伸びた頃が目安です。
- 方法: 親づるの先端にある柔らかい芽を手で摘み取るか、清潔なハサミで切り取ります。ハサミを使う場合は、病気の感染を防ぐために必ず消毒してから使用してください。
このタイミングで摘心すると、下の方の節から子づるが元気に伸び始め、株全体がこんもりと茂ります。ただし、半つる性の品種でこれを早くやりすぎると、低い位置にサヤが付き、地面に触れて品質が落ちることがあるため注意が必要です。
ただし、株元は摘葉して風通しを良くしておかないと害虫や病気が発生して収穫量が減ってしまう場合もあるので注意が必要です。
草丈の抑制が目的の場合
つるが伸びすぎて管理が大変になるのを防ぐ場合は、支柱の高さを基準に摘心します。
- タイミング: 親づるが支柱の先端(手の届く高さ)まで達したとき。
- 方法: 支柱の高さに合わせて、つるの先端を切り取ります。その後、伸びてくる子づるや孫づるも同様に、支柱の高さを超えそうになったらその都度摘心し、ネットにバランス良く誘引していきます。
この作業により、株のエネルギーが無駄に上へ伸びるのを防ぎ、サヤの充実に集中させることができます。
収穫期間を長くするための追肥と摘葉

つるありインゲンは収穫期間が1ヶ月以上と長いため、収穫が始まってからも株の勢いを維持する「追肥」と「摘葉」が、長くたくさん収穫するための重要なポイントになります。
追肥のタイミングと量
インゲンはマメ科植物ですが、他のマメ科と比べて肥料をよく吸収して成長します。肥料が切れると株が弱り、花が咲かなくなったり、サヤの付きが悪くなったりします。
- 1回目の追肥: 開花が始まった頃。花を咲かせ、サヤをつけ始めるには多くのエネルギーが必要になります。
- 2回目以降の追肥: 収穫が始まった頃から、その後は2~3週間に1回程度のペースで行います。
追肥は、化成肥料(N:P:K=8:8:8など)を1平方メートルあたり軽く一握り(約30g)ほどを畝ではなく通路にぱらぱらとまき、土と軽く混ぜ合わせるようにします。
摘葉で風通しと日当たりを改善
収穫期の中盤以降になると、葉が茂りすぎて株の内側が密集してきます。古い葉や、重なり合って日光が当たらない葉は光合成の効率が落ちるだけでなく、風通しを悪くして病気の原因にもなります。 このような不要な葉を摘み取る作業が「摘葉」です。
- 摘葉する葉: 黄色くなった古い葉、病気にかかった葉、内側で込み合っている葉。
- 方法: 清潔なハサミで、葉の付け根(葉柄)から切り取ります。
一度に大量の葉を摘み取ると株が弱ってしまうため、収穫作業と並行して、少しずつこまめに行うのがコツです。摘葉によって株の内部まで日光が届き、新しい花芽が付きやすくなります。また、収穫のし忘れも株を弱らせる原因になるため、こまめな収穫と合わせて行いましょう。
つるありインゲンの収穫の目安
つるありインゲンの収穫は、種まきから約65~70日後、花が咲いてからは10~15日後くらいから始まります。収穫のタイミングを見逃さないことが、美味しいインゲンを長く楽しむための秘訣です。
収穫の最適なタイミングは、サヤの長さが12~15cm程度になり、中の豆のふくらみが外から見てわずかに分かる頃です。この時期のサヤは柔らかく、スジも気にならず、インゲン本来の風味と食感を最も楽しめます。
収穫が遅れてしまうと、サヤが硬くなり、スジも目立つようになります。食味が落ちるだけでなく、種を成熟させようと株がエネルギーを大量に消費してしまうため、その後の花の付きが悪くなり、結果として全体の収穫量が減ってしまいます。
収穫は、晴れた日の午前中に行うのがおすすめです。サヤを手で持つか、ハサミを使って、つけ根の部分から切り取ります。このとき、つるや茎を傷つけないように注意しましょう。 収穫は2~3日に1回のペースでこまめに行い、採り遅れがないようにするのが、株の負担を減らして次のサヤを育て、収穫期間を最大限に延ばすための最も効果的な方法と言えます。
つるありインゲン栽培は摘心で収穫量アップ
この記事では、つるありインゲンの栽培における摘心の重要性から、栽培全体の流れまでを解説しました。最後に、収穫量を最大化するためのポイントをまとめます。
- つるありインゲンの栽培は春まきと夏まきが可能
- 栽培に適した土壌はpH6.0~6.5の弱酸性~中性
- 連作障害を避けるためマメ科の後の栽培はNG
- 種まきは深さ2~3cmに3~4粒ずつ、株間は30~40cm確保
- 種が腐るため種まき後の過度な水やりは避ける
- つるが伸びる前に安定した支柱とネットを設置する
- 摘心は収量アップと草丈管理のために有効な作業
- 収量アップ目的の摘心は、つるが100cmほどの頃
- 草丈管理の摘心は支柱の高さに合わせる
- 摘心は清潔なハサミか手で先端を摘み取る
- 追肥は開花期と収穫開始後に行い株の勢いを維持する
- 古い葉や込み合った葉を摘み取る摘葉で日当たりと風通しを改善する
- 収穫のタイミングはサヤの長さが12~15cmの頃
- 採り遅れは株を弱らせるためこまめな収穫が鍵
- 適切な管理を行えば1ヶ月以上の長期収穫が楽しめる
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