家庭菜園で玉ねぎの栽培に挑戦してみたいけれど、何から手をつければ良いか分からず、失敗しないか不安に感じていませんか?
特に、基本となる土作りや適切な肥料の与え方など、専門的な知識が必要そうで難しく感じるかもしれません。しかし、いくつかのポイントを押さえるだけで、初心者の方でも美味しい玉ねぎを収穫することは十分に可能です。
この記事では、玉ねぎ栽培が初めての方でも安心して始められるよう、失敗を避けるための具体的な手順とコツを、準備から収穫まで分かりやすく解説していきます。
この記事を読むことで、以下の点が明確になります。
- 初心者におすすめの品種と最適な栽培スケジュール
- プランターと畑、それぞれの土作りの具体的な方法
- 玉ねぎを大きく甘く育てるための追肥と管理のコツ
- よくある失敗の原因と、それを回避するための対策
玉ねぎの育て方|初心者が始める前の準備リスト

- 最適な栽培時期とおすすめ品種
- 酸性を嫌う玉ねぎのための土作り
- プランター栽培で準備するものと注意点
- 苗の植え方は浅植えが成功の秘訣
- 植え付け後の水やりの頻度は?
最適な栽培時期とおすすめ品種
玉ねぎ栽培を成功させる第一歩は、自分の栽培スタイルに合った品種と、その品種に適した栽培時期を理解することです。特に初心者の場合は、栽培期間が短く管理しやすい品種を選ぶことが、失敗を減らす鍵となります。
初心者には「早生品種」の「苗」がおすすめ
玉ねぎは種から育てることもできますが、育苗には約2ヶ月かかり、温度管理なども必要なため初心者には少し難易度が高くなります。そのため、最初は園芸店やホームセンターで販売されている苗から始めるのが最も手軽で確実な方法です。
品種は、収穫時期によって「早生(わせ)」、「中生(なかて)」、「晩生(おくて)」などに大別されます。この中で初心者におすすめなのは、栽培期間が短く、病気のリスクも少ない「早生品種」です。4月下旬から5月頃に収穫できるため、梅雨時期の病気が発生する前に収穫を終えられる可能性が高まります。
品種ごとの特徴と栽培スケジュール
品種の早晩性(収穫時期の早さや遅さ)によって、栽培スケジュールや貯蔵性が異なります。以下に主な違いをまとめましたので、参考にしてください。
早晩性 | 主な収穫時期(中間地) | 貯蔵期間 | 特徴 |
---|---|---|---|
極早生 | 3月下旬~4月下旬 | 短い(長期保存に不向き) | 辛みが少なく甘みが強い。新玉ねぎとして生食に向く。 |
早生 | 4月中旬~5月下旬 | 夏まで | 比較的甘みが強く、みずみずしい。初心者でも育てやすい。 |
中生 | 5月下旬~6月上旬 | 年内まで | 一般的に流通しているタイプ。貯蔵性もそこそこ良い。 |
晩生 | 6月中旬~下旬 | 翌春まで | 貯蔵性が非常に高い。じっくり育てる必要がある。 |
このように、すぐに味わいたいなら早生、長く保存したいなら晩生と、目的に合わせて品種を選びます。初心者はまず早生品種の栽培に慣れ、翌年以降に中生や晩生に挑戦してみるのが良いでしょう。
酸性を嫌う玉ねぎのための土作り
玉ねぎは、日本の土壌に多い酸性土壌を苦手とします。生育が著しく悪くなったり、球が十分に大きくならなかったりするため、植え付け前の土作りは非常に大切な工程です。
畑(地植え)の場合、植え付けの2週間以上前には準備を始めます。まず、1平方メートルあたり3握り(約150g)の苦土石灰を畑全体にまき、土とよく混ぜ合わせて耕しておきます。こうすることで、土壌の酸度(pH)が中和され、玉ねぎが育ちやすい環境になります。
そして植え付けの1週間前には、元肥を施します。1平方メートルあたり完熟堆肥を約3kg、化成肥料(N:P:K=8:8:8など)を2握り(約100g)まいて、再度よく耕します。堆肥をしっかり入れることで、土がふかふかになり、水はけと水もちのバランスが良くなります。
プランター栽培の場合も考え方は同じです。市販の野菜用培養土はすでにpHが調整されていることが多いですが、古い土を再利用する場合などは同様に苦土石灰で調整すると安心です。
また、畑で栽培する際は黒いポリマルチシートを畝にかぶせることを強くおすすめします。マルチには雑草の発生を抑える、土の乾燥を防ぐ、地温を保つといった多くのメリットがあり、その後の管理が格段に楽になります。
プランター栽培で準備するものと注意点
玉ねぎは畑がないと育てられないと思われがちですが、プランターを使えばベランダなどの省スペースでも十分に栽培を楽しむことができます。
準備するもの
プランターで栽培を始めるにあたり、最低限用意したいのは以下の資材です。
- プランター: 玉ねぎの根はそれほど深く張りませんが、ある程度の土量は必要です。深さが20cm以上ある標準的なプランターを選びましょう。
- 野菜用培養土: 初心者の場合は、肥料があらかじめ配合された市販の「野菜用培養土」を使うのが最も簡単で確実です。自分で土を配合する手間が省けます。
- 鉢底石: プランターの底に敷き、水はけを良くするために使います。ネットに入ったものが後片付けも楽で便利です。
- 玉ねぎの苗: 前述の通り、自分の栽培計画に合った品種の苗を選びます。
プランター栽培の注意点
プランター栽培は手軽ですが、いくつか注意点があります。まず、置き場所です。玉ねぎは日光を好むため、できるだけ日当たりの良い場所に置きましょう。ただし、真夏の強い西日などは株を弱らせることもあるので、季節に応じて最適な場所を探します。風通しの良さも、病気を防ぐ上で大切です。
また、市販の培養土には元肥が含まれていることがほとんどです。そのため、植え付け時に自分で追加の肥料を混ぜ込むと、肥料過多になってしまう可能性があります。特に、窒素成分が多すぎると葉ばかりが茂り、肝心の玉ねぎが大きくならないことがあるため注意が必要です。培養土のパッケージを確認し、元肥入りの場合は追加の肥料は不要です。
苗の植え方は浅植えが成功の秘訣
良い苗を選び、適切な土作りができたら、いよいよ植え付けです。ここで押さえるべき最大のポイントは、「浅植え」を徹底することです。
良い苗の選び方
まず、植え付けに適した苗を選ぶことが大切です。チェックするポイントは、根元の太さです。直径が5~8mm程度、ちょうど鉛筆くらいの太さのものが最適です。これより太すぎる苗は、冬の寒さに当たった後、春に「トウ立ち(花芽が出てきてしまうこと)」を起こしやすくなります。トウ立ちすると球が硬くなり、食味が落ちてしまうので注意が必要です。逆に細すぎる苗は、冬の寒さや霜で枯れてしまうことがあります。草丈は20~25cm程度のものが良いでしょう。
植え付けの手順
植え付けの適期は、中間地で11月上旬から12月上旬頃です。株間は12~15cmほどあけます。マルチを張っている場合は、その穴に1本ずつ植えていきます。
植える際は、指で深さ2~3cmほどの穴をあけ、苗を差し込みます。このとき、苗の白い部分(葉鞘部)が土に完全に埋まらないよう、半分から3分の1ほどが地上に見えるくらいの深さに植えるのが「浅植え」のコツです。深植えをすると、玉ねぎが丸くならずに縦長の形になったり、球の肥大が悪くなったりする原因になります。
植え付けた後は、苗が倒れないように株元の土を軽く寄せ、指でやさしく押さえて土と苗を密着させます。最後にたっぷりと水を与えれば、植え付けは完了です。
植え付け後の水やりの頻度は?
玉ねぎ栽培における水やりは、地植えかプランター栽培かによって考え方が少し異なります。いずれの場合も、水のやりすぎは根腐れや病気の原因になるため、土の状態をよく観察することが大切です。
地植え(畑)で栽培している場合、基本的に水やりは不要で、自然の降雨に任せて問題ありません。玉ねぎの根は比較的浅い場所に張りますが、ある程度の乾燥には耐えられます。ただし、植え付け直後や、冬から春にかけて雨が全く降らず、土がカラカラに乾いている状態が長く続くようであれば、水やりが必要です。
一方、プランター栽培の場合は土が乾燥しやすいため、定期的な水やりが欠かせません。水やりの基本は、「土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与える」ことです。水の量が中途半端だと、土の表面しか湿らず、根が水を求めて地表近くに張ってしまい、乾燥に弱い株になってしまいます。
特に注意したいのが冬場の水やりです。気温が低い時期に夕方以降に水やりをすると、夜間の冷え込みで土の中の水分が凍り、根を傷める原因になります。冬場に水やりをする際は、気温が比較的高い日の午前中に行うように心がけましょう。
玉ねぎの育て方|初心者のための栽培管理とコツ

- 追肥の肥料はいつ、何を与える?
- 玉を大きくする方法と日々の管理
- 収穫のサインと保存のポイント
- よくある失敗原因と対策を知る
- 栽培失敗を防ぐ病害虫対策
追肥の肥料はいつ、何を与える?
玉ねぎは栽培期間が長いため、植え付け時の元肥だけでは途中で肥料が不足してしまいます。そのため、生育の途中で肥料を追加する「追肥」が、立派な玉ねぎを育てるための重要な作業となります。
追肥のタイミングと量は、玉ねぎの生育を左右する非常にデリケートな要素です。早すぎても遅すぎても、また多すぎても少なすぎてもうまくいきません。基本的には2回の追肥を行いますが、品種によって調整が必要です。
1回目の追肥
1回目の追肥は、苗が畑に根付いて落ち着いた頃、植え付けから25日~1ヶ月後が目安です。1平方メートルあたり、化成肥料(N:P:K=8:8:8など)を軽く1握り(約30g~50g)施します。マルチをしていない場合は、株と株の間にばらまき、土と軽く混ぜ合わせます。マルチ栽培の場合は、マルチの穴からひとつまみずつ丁寧に与えましょう。
2回目の追肥
2回目の追肥は、冬の寒さが和らぎ、玉ねぎが再び成長を始める早春に行います。関東などの中間地では、3月上旬頃が目安です。この時期の追肥は、これから大きくなる球を肥大させるための大切な栄養補給となります。量は1回目と同様です。
追肥で最も注意すべき点は、3月下旬以降は追肥をしないことです。生育の後半、特に収穫が近づいた時期に肥料(特に窒素成分)が効きすぎると、球の締まりが悪くなって水分過多になり、貯蔵性が著しく低下します。病気にもかかりやすくなるため、「止め肥え」のタイミングをしっかり守ることが、長く保存できる玉ねぎを作るコツです。
玉を大きくする方法と日々の管理
適切な追肥の他に、玉ねぎを大きく健全に育てるためには、日々の地道な管理作業が影響します。特に「雑草対策」と「霜対策」は、見過ごされがちですが重要なポイントです。
玉ねぎは他の野菜に比べて生育がゆっくりで、背も低いため、雑草との競争に非常に弱い性質を持っています。周囲に雑草が生い茂ると、日光が遮られるだけでなく、土の中の水分や養分を横取りされてしまい、玉ねぎの生育が妨げられます。このため、雑草は見つけ次第、小さいうちにこまめに抜き取ることが、玉ねぎを大きくするための基本となります。黒マルチをしていれば雑草の心配は大幅に軽減されます。
もう一つ、冬場の管理として重要なのが「霜対策」です。冬に強い霜柱が立つと、土が持ち上げられ、植え付けた玉ねぎの苗が根ごと浮き上がってしまうことがあります。根が空気にさらされると乾燥して枯れてしまう原因になるため、畑を見回った際に苗が浮き上がっていたら、手で株元をしっかりと押さえて土に密着させ直してください。
また、対策として株元にワラや刈草を敷いておくのも効果的です。霜よけになるだけでなく、土の乾燥防止や、春先の雑草抑制にもつながります。このような日々の少しの手間が、春の大きな収穫へと結びつきます。
収穫のサインと保存のポイント

半年近く手間をかけて育ててきた玉ねぎも、いよいよ収穫の時期を迎えます。収穫のタイミングを的確に見極め、正しく乾燥・保存することが、美味しさを最大限に引き出し、長持ちさせるための最後の仕上げとなります。
収穫の適期を示すサインは、玉ねぎ自身がはっきりと教えてくれます。それは、葉の「倒伏(とうふく)」です。球が十分に肥大すると、葉の根元(首)の部分が柔らかくなり、自然にパタパタと倒れ始めます。畑全体の8割ほどの葉が倒れたら、収穫適期の合図です。このサインを見逃さず、天気の良い日を選んで収穫作業を行いましょう。
収穫が早すぎると球が十分に大きくなっていません。逆に、倒伏してからも長く畑に置きすぎると、病気にかかったり、球が割れたりして品質が落ちてしまうため注意が必要です。
収穫した玉ねぎは、すぐに保存するのではなく、まずは乾燥させることが大切です。収穫したその場で、葉をつけたまま畑に1~3日ほど並べて天日干しにします。こうすることで、表面の余分な水分が飛び、腐敗しにくくなります。
乾燥させた後は、保存作業に入ります。長期間保存する場合は、5~6株ずつ葉の部分を紐で束ね、雨が当たらず風通しの良い軒下などに吊るしておく「吊るし貯蔵」が最も一般的です。見た目も良く、効率的に乾燥が進みます。吊るす場所がない場合は、葉を根元から数cm残して切り落とし、ネットの袋や段ボール箱に入れて、同様に風通しの良い冷暗所で保管します。
ただし、前述の通り、早生品種(新玉ねぎ)は水分が多いため、長期保存には向きません。なるべく早めに食べきるようにしましょう。
よくある失敗原因と対策を知る
玉ねぎ栽培で初心者が直面しがちな失敗には、いくつかの典型的なパターンがあります。その原因と対策をあらかじめ知っておくことで、多くのトラブルは回避できます。
トウ立ちしてしまった
春になると、玉ねぎの真ん中から硬いネギ坊主(花芽)が伸びてきてしまうのが「トウ立ち」です。これが発生すると、栄養が花の方に取られてしまい、球は硬く小さくなり、食味も大きく落ちてしまいます。
主な原因は、植え付けた苗が大きすぎることです。直径が1cmを超えるような太い苗を植え付けてしまうと、冬の寒さを経験した後に、子孫を残そうとして花芽をつけやすくなります。これを防ぐには、植え付け時に鉛筆程度の太さ(5~8mm)の適切なサイズの苗を選ぶことが最も重要です。
球が大きくならなかった
期待していたほど球が大きくならなかった、というのもよくある失敗です。原因はいくつか考えられます。
- 肥料不足: 追肥のタイミングが遅れたり、量が少なかったりすると、球が肥大する時期に栄養が足りなくなります。
- 日照不足: 玉ねぎは日光を好みます。日当たりの悪い場所で育てると、光合成が十分に行えず生育不良になります。
- 酸性土壌: 前述の通り、土作りで酸度調整ができていないと、根が栄養をうまく吸収できません。
- 雑草: 雑草に養分を奪われてしまったケースです。
これらの原因を一つずつ潰していくことが、大きな玉ねぎを育てるための近道です。
土の中で腐ってしまった
収穫しようとしたら土の中で腐っていた、という悲しい失敗の原因は、主に「排水不良」です。玉ねぎは過湿を嫌い、畑に水が溜まるような環境だと根が酸欠状態になり、軟腐病などの病気にかかりやすくなります。畝を高くして水はけを良くする、粘土質の畑であれば堆肥などを多めに入れて土壌改良を行うといった対策が有効です。
栽培失敗を防ぐ病害虫対策

玉ねぎは比較的病害虫に強い野菜ですが、栽培期間が長いため、全く被害に遭わないわけではありません。被害を最小限に抑えるには、発生してから対処するよりも、発生しにくい環境を整える「予防」が基本となります。
注意したい主な病気は、春先の長雨の時期に発生しやすい「べと病」や、球が腐って異臭を放つ「軟腐病」などです。これらの病気の多くは、多湿な環境で発生しやすくなります。対策の基本は、畝を高くして水はけを良くすること、そして株間を適切にあけて風通しを確保することです。密植しすぎると、葉が密集して湿気がこもり、病気の温床になってしまいます。
一方、害虫では、根を食害する「タネバエ」や、葉の汁を吸う「アブラムシ」、夜間に葉を食い荒らす「ヨトウムシ」などに注意が必要です。タネバエは未熟な堆肥を土に混ぜ込むと発生しやすいため、元肥には必ず完熟したものを使用しましょう。
連作障害も病害虫のリスクを高めます。一度玉ねぎを栽培した場所では、2~3年はネギ類(ネギ、ニラ、ラッキョウなど)の栽培を避けるのが望ましいです。健全な株を育てることが最大の防御策となるため、日々の観察を怠らず、病気や害虫の初期症状を見つけたら早めに対処することが大切です。
玉ねぎの育て方|初心者は苗から挑戦
この記事では、初心者が玉ねぎ栽培で失敗しないためのポイントを解説しました。多くの手順があり難しく感じたかもしれませんが、大切な要点はシンプルです。最後に、成功への鍵となるポイントをまとめます。
- 初心者は栽培期間が短い早生品種がおすすめ
- 種からではなく失敗の少ない市販の苗から始める
- 玉ねぎは酸性土壌を嫌うため土壌改良が必須
- 植え付け2週間前には苦土石灰を畑に混ぜ込む
- 元肥には完熟堆肥をしっかり入れて土をふかふかにする
- プランターで栽培する場合は深さ20cm以上のものを選ぶ
- 植え付ける苗は鉛筆くらいの太さが最適
- 太すぎる苗は春にトウ立ちしやすいので避ける
- 植え付けは深植えせず白い部分が見えるくらい浅く植える
- 追肥はタイミングと量を守り3月下旬以降は行わない
- 地植えの水やりは基本的に不要で降雨に任せる
- プランターは土の表面が乾いたらたっぷり水を与える
- 雑草は養分を奪うのでこまめに抜き取る
- 冬の霜柱で苗が浮いたら手で押さえておく
- 全体の8割の葉が自然に倒れたら収穫のサイン
- 収穫後はよく乾燥させてから風通しの良い場所で保存する

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